【医学部の小論文対策】出題傾向一覧
【医学部の小論文対策】出題傾向一覧です。
掲載しているデータは、各大学のHPより発表されたデータになります。
私立大学
※ーは非公表・未確認
| 大学名(医学部) | 問題内容 | 出題傾向 | 対策 | ||
| 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |||
| 東北医科薬科大学 | 1日目
日本における年齢階級別自殺者数の推移を示すグラフを見て、そこから読み取れることとその理由について、自分の考えを600字以内で述べる。 2日目 脳血管疾患の患者の死亡率と救急搬送の平均時間との関係を都道府県別に示すグラフを見て、地域格差が生じる要因と対策について、自分の考えを600字以内で述べる。 |
1日目
医療施設に従事する医師、薬剤師に占める女性の割合の年次推移を示すグラフと、年齢階級別にその割合を示すグラフを見て、薬剤師とは異なり医師では女性の占める割合が年齢とともに低下していく原因を考察し、医師の労働環境についての自分の考えを600字以内で述べる。 2日目 若者のインターネット利用についての2つのグラフを見て、そこから読み取れる現状と問題点、そしてその対策について、自分の考えを600字以内で述べる。 |
1日目
死亡事故件数と75歳以上と同未満の免許所有者10万人当たりの件数を示すグラフと、年代別自動車運転免許自主返納率を示すグラフとを見て、グラフから読み取れることの社会情勢を踏まえての確認と今後の対策について、自分の考えを600字以内で述べる。 2日目 余命1年となったとき、どこで最期を迎えたいか、またそれまでの医療ケアをどこで受けたいかについて示したグラフ、地域別の自宅での死・介護施設での死の割合を示すグラフ、地域別の在宅医療支援所・病院の割合を示すグラフのあわせて3つの図を見て、そこから読み取れる問題点と対策について、自分の考えを600字以内で述べる。 |
2024年度も2022年度以降の傾向に沿って、グラフからの出題となった。1日目では、高齢者の自動車運転事故について考察させる課題が、2日目には終末期医療のあり方について考えさせる課題が提示された。内容面では近年の医療・福祉・健康等に関わる社会問題についての理解・考察を求める出題が続いていると言えよう。 | 近年の医療・福祉・健康に関わる問題に目を向け、医師としての視点で自分の考えを構築するようにしよう。内容面では一貫性を保った出題が続いているので、社会にしっかりと目を向け、そこにある問題の本質を見抜き、その原因や解決策などを考えるように心がけておきたい。当然、ここで確認した話題についての時事に対応した知識を身につけておくことも意識してもらいたい。2024年度1日目の「社会情勢を踏まえて」はまさしくその点をついたものであり、2024年問題による交通機関の利便性の低下、過疎化した地域の企業撤退等により、免許の返納が生活水準の著しい低下を招くことがあることを踏まえているか否かも問われていたと言える。論述対策としては、テーマ型、グラフ型の問題には広くふれておくとよいだろう。他大学の過去問では、昭和大学や久留米大学、国際医療福祉大学、日本医科大学の過去問などがテーマ性から役に立つものと考えられる。 |
| 獨協医科大学 | 1日目
桑子敏雄「何のための『教養』か」 問1:本文を200字以内で要約する。 問2:本文の内容について、自分の考えを400字以内で述べる。 2日目 養老孟司「バカの壁」 問1:本文を200字以内で要約する。 問2:本文の内容について、自分の考えを400字以内で述べる。 |
1日目
養老孟司「『自分』の壁」 問1:本文を200字以内で要約する。 問2:本文の内容について、自分の考えを400字以内で述べる。 2日目 大栗博司「探究する精神 職業としての基礎科学」 問1:本文を200字以内で要約する。 問2:本文の内容について、自分の考えを400字以内で述べる。 |
1日目
「マジョリティ中心の社会における自分の立ち位置を知ること̶社会モデルに基づく支援とは」(雑誌記事) 問1:本文を200字以内で要約する。 問2:本文の内容について、自分の考えを400字以内で述べる。 2日目 鷲田清一「大事なものは見えにくい」 問1:本文を200字以内で要約する。 問2:本文の内容について、自分の考えを400字以内で述べる。 |
例年通り、問1が200字以内の要約、問2が本文に対する400字以内での論述という問題構成となった。1日目・2日目とも、社会の中で人間としてどう生きるか、どうあるべきかについて考えさせるものであり、そこに問題の本質を見抜き、適切な考察力とそれに基づく問題解決能力が求められる出題であった。医師に求められる考え方、倫理観とそれに基づく考察を求めるものであり、例年通りの出題であったと言える。 | 2024年度も今までと同様の「良医になる適性の有無を測ろうとする明確な意識の感じられる出題」となった。課題文型の典型形式での出題であるので、形式をしっかりと確認したうえで、過去問に取り組むことが重要と言える。その際、設問を通して受験生のどの側面から良医になる適性の有無を測ろうとしているのかをよく考え、自身に良医になる適性があることをアピールできる形で考察を進めていくべきであることに意識を向けてもらいたい。一方、要約問題については一定の分量を200字以内でテーマ、根拠、主張を効率よくまとめる練習を積み重ねておきたい。本学の過去問の他に、金沢医科大学一般選抜の問1などが役に立つだろう。 |
| 国際医療福祉大学 | AI の医学・医療への応用が期待されている。そのAI が医学・医療に与える影響や課題について、自分の考えを600字以内で述べる。 | 若手医療者の臨床学習と患者に最善の医療を提供することを両立するために安全性の観点から重要だと考えられることについて、自分の考えを600字以内で述べる。 | 2024年4月から始まる医師の働き方改革の患者の安全性の観点から考えられる利点と懸念点について、自分の考えを600字以内で述べる。 | 2024年度も例年と同様、比較的短くまとまったテーマ型の出題となった。内容もこれまでと同様、医療者を目指すべき人間が考慮しておくべき社会的な話題からの出題で、今までの傾向が継続していると考えてよい。具体的には、患者の安全性の観点から医師の働き方改革の利点と欠点について考えさせるもので、一定の練習を積んでいる受験生であれば対応しやすい問題であったとも言える。ただ、本学の問題においてはしばしば、設問文の中に解答の条件が隠されていることがあるので、この点については注意しておきたい。 | 基本的に医療・福祉分野の時事のテーマからの出題に対応できるようになることが重要。ただ、「医療分野と関係がないようで、実は医療にも影響がある」という事柄が出題されることを想定し、医療分野に加えて、現代社会の時事的な事柄について理解しておくことも重要になる。時事の話題に対応できない受験生は意外に多いので、この点を意識して時事の知識を獲得することを心がけてほしい。同時に、出題傾向が安定していることもあり、過去問を活用した学習に取り組んでいくことが大切になる。また、他の医療系学部の過去問にも形式・内容の面で医学部の問題と共通するところが多いので、医学部の過去問に加えてこれらの問題にも取り組んでおくとよい。 |
| 埼玉医科大学 | 和文2題/英文1題
大問1【和文】:古典学が古典になりうることを解説する文章を読み、そのようなことが起こる理由を120字以内で説明する。 大問2【和文】:ガラム理論について解説する文章を読み、以下の問に答える。 問1:本文に基づいて示された図を完成させる。 問2:本文に示された例をもとにガラム理論についての考えを50字以内で述べる。 大問3【英文】:アメリカにおける表現の自由についての文章を読み、以下の問に答える。 問1:下線部和訳 問2:段落要約(120字以内) 問3:和文英訳 |
和文2題/英文1題
大問1【和文】:阿刀田高『日本語えとせとら』から抜粋された文章を読み、下線部の内容を150字~200字で説明する。 大問2【和文】:石黒浩『ロボットと人間 人とは何か』から抜粋された文章を読み、以下の問に答える。 問1:例にならってロボットと人間の関係を示す簡略図を描く。 問2:筆者がコミュニケーションを継続するために重要と考えることについて150字以内でまとめる。 大問3【英文】:礼儀的無関心に関する英文を読み、以下の問に答える。 問1:下線部和訳 問2:内容説明(120字以内) 問3:下線部和訳 |
和文2題/英文1題
大問1【和文】:池波正太郎『むかしの味』から抜粋された文章を読み、下線部を付された友だちの行為の背後にある心情を200字以内で説明する。 大問2【和文】:和泉悠『悪い言語哲学入門』から抜粋された文章を読み、以下の問いに答える。 問1:空欄に入る適切な言葉を記す。 問2:下線部アの発言と下線部イの発言から誤誘導の発言を選び、その発言が嘘ではないと言える理由と、その発言に込められた意図を、あわせて100字程度で説明する。 大問3【英文】:さまざまなケア(care)について論じる英文を読み、以下の問いに答える。 問1:内容説明(100字以内) 問2:下線部和訳 問3:和文英訳 |
2021年度に変更となった出題形式を踏襲し、2024年度も和文から2題、英文から1題の記述式の出題であった。出題形式は、和文の出題に関して言えば、今までの推薦入試の小論文の問題に含まれるものであり、それほど難しいものではない。設問の要求を意識して課題文をしっかりと読み込めば、設問の要求に答える内容を見つけられるものである。一方、英文の出題は、さまざまなケアについて論じる文章からの出題となった。日常生活に見られる事象を入り口としてはいるが、文章の抽象度は高い。例年通り、しっかりとした英文読解力が要求されるものであったと言えるだろう。 | 和文に関しては本学の推薦入試と類似した形式であった。課題文を読み、傍線部の内容に100字~200字で答える練習をしたい。国公立大学文系学部の現代文の問題で、評論、小説ともに練習を重ねておくこともよい対策となるはずだ。また、筆者の主張に対する意見を50字~100字でまとめる練習も重ねておこう。論理理解については、字数の違いこそあるものの、金沢医科大学で類題が出題されているので、これらの問題に取り組んでおくとよい。英文に関しては非常に高いレベルの文章からの出題が続いている。語彙や熟語力、構文把握などを通じて解るところから解釈を広げていくようにしておきたい。これらの対処法を明確に意識しておき、時間内で答えきれるよう練習を積み重ねていきたい。 |
| 杏林大学 | 一般1日目
「組織と個人」について、800字程度で論じる。 一般2日目 「権利と義務」について、800字程度で論じる。 共通テスト利用(前期) 「妥協する」ということについて、800字程度で論じる。 共通テスト利用(後期) 「朝令暮改」について、800字程度で論じる。 |
一般1日目
「愚直」であることについて、800字程度で論じる。 一般2日目 「幸福」であることについて、800字程度で論じる。 共通テスト利用 「情けは人のためならず」のことわざについて、800字以内で論じる。 |
一般1日目
「内面と外見」について、800字程度で論じる。 一般2日目 「信じる」ということについて、800字程度で論じる。 共通テスト利用 「仕事と趣味」について、800字程度で論じる。 |
2024年度も一文テーマ型での出題であった。一見、医療とは関係のないもののように見えつつ実は医療の現場で医療者が問われる事柄についての考えを問う出題になっている点も、例年と変わりなかった。「良医」にふさわしい考え方を持つことができているかどうかを、様々なテーマから測ろうとする出題が続いていると言えるだろう。2024年度1日目の課題から言えば、どのような人にも「内面と外見」が存在すること、そのうえで人は他者とどのように接していくべきかということについて考察していけば、十分に対応できたはずである。医師も患者という他者に接していく職業であることを考えれば、出題されて当然のテーマであったと言えるだろう。 | 一文テーマ型で医療者としての姿勢に関わるテーマの出題が続いている。それらのテーマを医師・医療者の立場で考える訓練を積み重ねておきたい。制限字数が800字という長めの字数であるので、論理破綻を来たすことがないよう、構成をしっかりと組み立ててから文章を作り上げる練習も必要になる。結論の段落、現状・前提を紹介して分析する段落、さらに分析を加える段落、というように文章における各段落の役割を意識して構成を立てつつ文章を作成していく練習を繰り返しておこう。なお、本学は過去問題の入手が比較的容易であるため、過去問題を中心にした練習を積み重ねておくことが一番の対策になる。 |
| 慶應義塾大学 | 幼稚園児が花屋で花を買おうとしたが3円足りなかった。そこにたまたまあなたが通りかかった。あなたならどう行動するか、ということについて、自分の考えを600字以内で述べる。 | 寺田寅彦「科学者とあたま」を読み、「科学者はあたまがよくなくてはいけない」だけでなく、「あたまが悪くなくてはならない」ということについて、自分の考えを500字以上600字以内で述べる。 | 「負傷した兵士をうつ伏せ寝させるのと同じように、赤ちゃんのうつ伏せ寝を推奨したことで、多くの赤ちゃんが亡くなった」という内容の文章を読んで、このようなことを防ぐにはどうしたらよいか、自分の考えを500字以上600字以内で述べる。 | 課題文型か短文テーマ型での出題が続いている。いずれの年でも、医師として持つべき倫理観、プロフェッショナリズムに関わること、正しい知識の理解とその運用等について考えさせる出題となっている。2024年度の出題もこの流れでの出題となった。課題文型からの出題であったため、考察のための時間が短くなると考えた受験生もいたかもしれないが、設問の要求を確認したうえで本文を読めば、筆者の見解を容易におさえることができる文章であった。内容を理解し、良医を目指す人間にとってどのような意味をもつかを意識して考察を進めていけばよかったと言える。 | 与えられたテーマや文章についての現状を確認し、そのことに対する自分の考えを簡潔にまとめる練習から始めたい。その後、自分の考えを支える根拠を掘り下げ、その因果関係、展開をしっかりと整理して一定量の文章を書きあげる練習をしていくとよい。また、一定の分量の論述を要求されていることから、構成についてもしっかりと意識することが必要だ。また、内容面については良医の視点から考えることは必要だが、課題の要求から論述内容が外れないことに注意してもらいたい。課題の要求が医療に関わらないものであれば、当然、論述内容を医療の話で展開する必要はない。聞かれたことにしっかりと答える姿勢を示してもらいたい。本学の過去問は入手が難しいので、手に入るようであれば東京医科大学、愛知医科大学、川崎医科大学、福岡大学などの過去問にふれておくことがよい練習になるだろう。 |
| 順天堂大学 | 約2億5千万年後に形成されると予測されているパンゲア・プロキシマ大陸を示す図を見て、この大陸にはどんな世界が広がっていると思うかを、800字以内で論述する。 | 特攻隊員が写された写真を見て、その人物になったつもりで、自身の思いも含めて家族への手紙を800字以内で記す。 | 「人種統合教育」と題された1976年に米国で撮影された写真(教室の中で黒人の子どもと白人の子どもが握手をしている写真)を見て、私たちに向けてのメッセージを写真に写る2人の子どもの言葉で800字以内で記す。
※出題文では米国で人種差別撤廃を目的に公立小学校で白人と黒人の比率を半分にしたこと、現在も多様化が目指されていることも記されている。 |
例年、絵や写真を見て思うこと、感じることを自由に述べる資料型で出題されている。絵や写真が出題された場合、そこに写っているものを客観的に捉えて表現する力に加え、感受性や想像力、共感力なども問われることに注意してもらいたい。2024年度では、黒人の子どもと白人の子どもが握手をする写真を見て、その子どもたちの言葉で私たちにメッセージを記すというものであった。人種差別を乗り越えて対等な関係を構築することがなぜ大切なのか、多様性のある社会構築がなぜ必要なのかについて考えさせる問題であったといえるだろう。一人ひとりで価値観や考え方の異なる患者と対峙する医師を目指す受験生への出題として適切なものであったと考えられる。 | 絵や写真といった資料のみが提示されており、思うことや感じることを述べる場合、まずは提示された資料について客観的な説明を行うことがポイントである。そのうえで、その写真に込められた思い、その写真の背景などを考察することが基本になる。補足や解説が加えられている場合においても、その補足や解説を利用しつつこれらのことを考察していきたい。2024年度の課題においても、写真に込められた思い、人種差別の問題をアメリカはどのように乗り越えようとしてきたのか、どのような課題が現在にも残っているのかなどをしっかりと考えることが求められていたと考えられ、例年通りの出題であったといえるだろう。課題の要求に対応した考察を進めていく訓練を積み重ねておくことが重要である。また、2024年度の「子どもの言葉で」などの条件がつくこともしばしばあるので、どのように表現していくことが求められているのか、どのような構成で記すことが要求されているのかといったことにも目を向けることを忘れないでほしい。これらのことを意識して過去問の演習を重ねることが一番の対策となるだろう。 |
| 昭和大学 | Ⅰ期1日目
孤独や閉塞感に悩む子どもに手を差し伸べるにはどのようにすればよいか。対策案を600字以内で述べる。 Ⅰ期2日目 情報通信機器を活用した健康増進医療に関する行為を遠隔医療といい、そのうち医師―患者間において情報通信機器を用いてリアルタイムに診療行為を行うものをオンライン診療という。このオンライン診療のメリット、デメリットと、実施にあたって医師に求められる知識について600字以内で述べる。 |
Ⅰ期1日目
AI 技術が医療の分野でも積極的に取り入れられ、AI が医師の診断率を上回る結果を残している報告もあるなかで、今後AI技術を活用する世界で、医師としての役割はどのように変化していくか、自身の考えを600字以内で述べる。 Ⅰ期2日目 ダイバーシティは「多様性」を意味する言葉で、性別にとらわれず様々なことを想定するものであることを前提に、現在の日本の医療が抱える性別も含めたダイバーシティに関する問題点とダイバーシティを推進することで期待されることについて、自身の考えを600字以内で述べる。 |
Ⅰ期1日目
現在、日本の医療では深刻な医師不足が問題になっている。このことは医師の絶対数の不足だけでなく、図に見られるような「地域による医師の偏在」も要因になっていると言われている。この地域による医師の偏在の問題を解決するにはどのような方法が考えられるか、ということについて、自身の考えを600字以内で述べる。 Ⅰ期2日目 2023年8月に製造販売が認可されたアルツハイマー治療薬「レカネマブ」では臨床試験の段階で一定の効果を期待できることが判明した。しかしながら、効果が期待されるのは早期アルツハイマー病であること、出血傾向を有する患者への投与には注意を要することの喚起も行われた。医療人の立場からこの新薬をどのように使用するかということについて、自身の考えを600字以内で述べる。 |
テーマ型での出題である。例年、長めのテーマが出題されているが、要求・条件が明示されているため、論じる方向性は定めやすいだろう。ただし、時事の話題についての細かな知識に触れられているため、しっかりとした知識を持っていないと、課題の要求自体を理解しきれないということもありうる。2024年度では、医師の偏在やアルツハイマー治療薬といった時事の話題からの出題となった。比較的頻出のテーマからの出題と言えるが、一定の知識を持っていないと対応しづらいテーマであったとも言える。社会問題の解決に良医を目指す人間にふさわしい視点をもって取り組んでいくことができるかどうかを測ろうとする出題が続いていると言える。 | 話題となっている医療やその周辺分野のテーマは必ず押さえるようにしよう。基本的な医療用語についての理解だけでなく、その用語にまつわる問題点や課題なども考えるようにしておきたい。特に時事の話題が出題されやすいということを念頭に置き、医療を中心に、話題となっている社会的問題をチェックしておくことが重要になる。これらの知識を利用し、出題の指定に応じて自分自身の考えを述べられるように練習をしておくことが合格水準の論文を作成する鍵になる。具体的には過去問の演習に加えて、形式は異なるもののテーマの近い、国際医療福祉大学や久留米大学の問題を確認し、そこで扱われているテーマについて調べてみるとよいだろう。 |
| 東京医科大学 | 「よい文章とは何か」について論じる鶴見俊輔の文章を読み、まず、自身が「紋切り型でない言葉」を作り出したと思える経験か、他者の書いた「紋切り型でない言葉」に出会ったと思える経験について具体的に述べ、そのうえで、なぜその言葉が「紋切り型でない言葉」だと言えるのかについて、自分の考えをあわせて600字以内で述べる。 | 18歳でハンセン病と診断され、47歳のときにその病気が原因で失明に至った女性が自らの半生を振り返って綴った文章を読み、彼女の述べる「ほんとに真実死に切って」ようやく笑うことができるようになったことがらについて、「死に切る」ということの意味、「死に切る」ことが笑えるようになることにつながる理由を十分に説明したうえで、困難な状況におかれた人が笑うにはどのようなことが必要かについて、自分の考えを600字以内で述べる。 | 阿保順子が勤務していた認知症専門病棟に入院していた患者の様子を書き取った文章(『認知症の人々が創造する世界』)を読み、以下に示す①~③にふれながら、健常な人が何年もかけて人と物、物と物との区別がつかなくなっていく過程で経験する悩みや苦しみについて、自分の考えを600字以内で述べる。(①私たちは、人と物、または物と物をどうやって区別しているのだろうか。②人と物、または物と物を区別できなくなっていく過程では、どのような困難や苦しみを経験していくのだろうか。③そのような困難や苦しみは、私たちの社会の状況といかに関連しているのだろうか。) | 2017年度以降、課題文を読んで自分の考えを600字以内で述べさせる出題が続いている。2024年度では認知症が進行していく中で経験する苦悩について考察することを求める課題が出題された。これは他者の話、患者の話にしっかりと耳を傾け、その人の立場に深く寄り添う能力を測ろうとするもの、そのような問題の原因を深く考察させるものであり、例年通り、「良医」に求められるものを持ち合わせているか否かを測る小論文であったと言えるだろう。本学もアドミッションポリシーとの整合性を問うことを公表しており、「良医」になれる人材であることをアピールする課題が今後も続くことが予想される。 | 標準的な課題文型の小論文ではあるが、細かな条件付けもあるのでこの点にしっかりと注意を向けるようにしたい。また、この条件の部分が要求されている論述内容についての大きなヒントになっているので、正確な読解力を鍛えることに加え、設問の要求・条件をしっかりと確認する習慣も身につけておきたい。また、効果的に自身の論を展開していくために、きちんとした構成で論じていく練習も積み重ねておきたい。基本的には過去の問題を用いた学習が効果的なものになる。 |
| 東京慈恵会医科大学 | 課題文を読み、その中から各自で自由に一つのテーマを選ぶ。なぜそのテーマを選んだのかを説明し、次いでテーマについて1200字~1800字で述べる。 | 課題文を読み、その中から各自で自由に一つのテーマを選ぶ。なぜそのテーマを選んだのかを説明し、次いでテーマについて1200字~1800字で述べる。 | 課題文を読み、その中から各自で自由に一つのテーマを選ぶ。なぜそのテーマを選んだのかを説明し、次いでテーマについて1200字~1800字で述べる。 | 課題文型の小論文で制限時間は90分以内、制限字数は1200字以上1800字以内となっている。課題文(2024年度は人口減少に関わる文章から出題された)を読んだうえで自らテーマを設定して論じることを求めている。字数設定が広いことから自由度は高いが、テーマ設定を適切に行うことが重要になる。また、設定したテーマに対する考察をただ述べるだけではいけない点にも注意が必要だ。テーマの中に問題点を発見し、そこを分析して解決策を提示する。さらに、そこで解決しきれていない問題を見極め、それを解決するためにはどうするべきか、ということをしっかりとした根拠とともに述べていくことが重要になる。貪欲に問題解決に努めていく姿勢、妥協することなく問題発見能力・問題解決能力を発揮する人間が求められていると言える。 | 問題の解決策を求める小論文の課題を活用したい。序論・本論・結論という小論文の基本的な構成に沿ってメモを作成し、構成メモをもとに800字~1200字の論文をまずは作成していきたい。難しければ600字や800字からスタートしてもよい。作成したら、さらに掘り下げることができる部分はないか考えて1500字、1800字と徐々に字数を増やして書いていくことが基本的な練習になるだろう。その際、自分の考えに対して予想される反論や別の視点からの考え方を想定すること、対比などを用いて文章を分かりやすくすることなどを考えるとよい。なお、実際の入試では書く順序を指定し、序論のなかでテーマ選択理由を述べることを求められる問題が出題されることもあるので、これらの「条件」に配慮することを忘れないようにしたい。尚、2025年度は、課題文の要約(300字以内)、課題文に対する論述(1200字以内)を課す。 |
| 東京女子医科大学 | 食品の廃棄が世界でどの程度行われているかについての説明を読み、現在日本においてできる対策と自身に明日からできることについて、800字以内で述べる。 | 三浦綾子「泥流地帯」の一節を読み、下線部2箇所で示される登場人物の心情についての自身の考えを、それぞれ400字以内(計800字以内)で述べる。 | AIと主治医で異なる治療法が提示された場合、患者であるあなたはどのように対応するかということについて、自身の考えを800字以内で述べる。 | 出題形式が大きく変化した2023年度とはうって変わって、2022年度までの出題形式に戻ったと考えられる。説明文をしっかりと読み、そのことについての考察を行うことを求めるものであった。内容はAIを医療現場で活用する場合に考えられる問題点を考えさせるものであり、他の私立大学医学部でもよく尋ねられるテーマからの出題であった。大幅な変更を行ったうえでもとの姿に戻っているので、当面、この形式からの出題が継続することが考えられる。 | 時事のテーマからの出題であることを念頭におき、小論文でよく尋ねられる課題に触れていくことが重要になる。また、大学の建学の精神とも対応する課題からの出題も続いているので、提示された課題の中で困難に陥っている人に寄り添う視点、一人ひとりで異なる考え方を尊重する視点などを意識して考察をすすめる習慣も身につけておきたい。「良医」を目指すことの出来る人間であることを示すことを意識して考察を進める練習を積み重ねておこう。具体的には短い課題文型の小論文、あるいは一定の分量をもつテーマ型の小論文の練習をしておきたい。昭和大学、国際医療福祉大学、日本医科大学、福岡大学などの問題で練習を重ねておくとよいだろう。 |
| 日本医科大学 | 前期1日目
猛烈な台風が接近している山間部の病院を土石流が襲うリスクが高まっている。土石流が発生すれば病院が倒壊するリスクがあるため、当然、入院患者を安全な場所に移動させなければならないが、その一方で、移動自体で生命を失う可能性の高い高齢患者もいる。院長は結局、患者全員の搬送を決めたが土石流は発生せず、搬送により数名の患者が死亡した。一部の医師、遺族は院長を激しく非難することになった。以上の事案について、自分の考えを600字以内で述べる。 前期2日目 ノーベル賞受賞につながったゲノム編集技術「クリスパー・キャス9」は農産物や畜産物の品種改良、遺伝子異常に起因する難病の治療などへの応用が期待される一方で、デザイナーベイビーの誕生などの倫理的問題も懸念される。私たちはこのゲノム編集技術をどのように利用していけばよいか、ということについて、自分の考えを600字以内で述べる。 |
前期1日目
厚生労働省資料「人口100人でみた日本 日本を100人の国に例えてみました。」(人口構成、雇用、福祉・年金、医療の項目がある)を見て、2つ以上の数字を選択して、日本社会の課題とその対策について、自分の考えを600字以内で述べる。 前期2日目 自分の祖母が健康診断で早期胃癌が発見されたとする。担当医からは外科的に胃切除術を行うことで根治可能であり、手術に伴うリスクも高くないという説明を受けている。しかし、祖母はかたくなに癌治療そのものを拒んでいる。家族のひとりとして祖母にどのように接し、どのような言葉をかけるか、ということについて、自分の考えを600字以内で述べる。 |
前期1日目
画像生成人工知能が制作し、美術コンテストの新進デジタルアーティスト部門で1位を受賞した絵を見て、「画像生成AI」が芸術・文化に与える影響について、自分の考えを600字以内で述べる。 前期2日目 外見から人の内面を判断してはいけないと言われる一方で患者さんは医師の外見を尊重するというデータもあるが、医療現場において医師は個性的な外見を出すべきか、ということについて、自分の考えを600字以内で述べる。 |
2024年度一般選抜(前期)の小論文では、1日目で提示された絵を見て与えられたテーマに答えるタイプの課題が出題された。近年では見られない形式からの出題とはなったが、今までにもこの形式からの出題は複数回実施されている。また、2023年度も数年ぶりに統計資料から出題されていたことから、2024年度も過去に実績のある形式からの出題となった。一方、2日目は医師の振舞いについて問うテーマ型の出題であり、例年通りの傾向を踏襲するものであった。本学の小論文では元々、テーマ型、短めの課題文型、図表の分析、写真・図画を提示しての出題など、様々な形式が採用されていることから、きちんと対策をとっていれば問題なく対応できる出題であったと言える。また、提示された課題資料、文章の中にある本質的な問題を見つけだし、それに対しての考察、提案を求めるものであったことを考えると、本学を含めて近年の医学部の小論文で頻出のスタイルの中にあるものとも言える。その意味で、一貫して「良医」の持つべき性質を持ちうるか否かを考えさせる、今まで通りの出題であったと言える。 | 本学の特徴は、テーマ型にせよ資料提示型にせよ、一見しただけでは何について論じればよいのかがわかりにくいことが多い。まずは、設問の要求が何なのか、テーマ、資料の中のどこがそのヒントになっているのかなど、出題情報の整理を行うことが重要になる。また、観察力、問題発見力、考察力、問題解決力、倫理観等の医師として持つべき適性を見ようとする課題であることを意識し、自分自身の発想、考察がこれらの適性を示せるものになっているかどうかを確認してから論述するようにしたい。ただし、自らが「良医」になりうる存在であることを示す論述が求められていることでは一貫しているので、自身が書こうとする内容、書き上げた論述がその要求に答えるものであったかどうかを確認しながら論文を仕上げるようにしたい。また、出題形式が多様であることから、なるべく多くの過去問題に取り組み、形式への対応力も身につけておくべきであろう。 |
| 聖マリアンナ医科大学 | 1日目
ロイ・ポーター 著/目羅公和 訳『身体と政治 イギリスにおける病気・死・医者』 問1:本文に挙げられたギズボーンの事例に示される、当時の開業医の「妥当な」(傍線部②)態度とはどのようなものかについて、30字以上50字以内で説明する。 問2:「科学的医学」以降、「病気になって回復するのは―あるいは死んでいくのは―彼らだったのである」(傍線部①)という状況は、どう変わったと推察されるか、100字以内で説明する。 問3:現代における医師―患者の関係をめぐる諸問題と解決の可能性について、自分の考えを300字以上400字以内で述べる。 2日目 野田智義・金井壽宏『リーダーシップの旅 見えないものを見る』 問1:本文を読み、「すごいリーダー幻想」とはどういうことかについて40字以内で説明する。 問2:傍線部「リーダーシップは特別な人だけではなく、『だれもの問題』」の理由を100字以内で説明する。 問3:医療現場において「リーダー」はどうあるべきか、自分の考えを400字以内で述べる。 |
1日目
添付資料を参考に、日本の若年層の自殺の現状と対策について、自分の考えを800字~1000字で述べる。 資料①: 先進国および韓国の若年層(15歳~35歳)の死因1位~3位をまとめたもの 資料②:誰でもゲートキーパ手帳(厚生労働省)内のイラスト 2日目 心停止あるいは脳死状態における臓器提供による移植医療について、自分の考えを800字~1000字で述べる。(添付資料あり) |
1日目
OECD 加盟国と日本それぞれの実質労働生産性をコロナ前の2019年を100とした場合の2021年の値を示す資料を読み、日本における新型コロナウイルス感染症の労働生産性への影響について、諸外国との違い、また、その要因について、自分の考えを800字~1000字で述べる。 2日目 日本の医療に関わる現状を示す表を見て、今後の日本の医療制度のあるべき姿について、自分の考えを800字~1000字で述べる。 |
出題形式が大きく変化した2023年度入試を踏襲した、補足資料を伴う短文テーマ型の出題で、制限字数も800字以上1000字であった。内容面は前期1日目では経済分野からの出題、2日目では医療・福祉に関わるテーマからの出題となった。ただし、前期1日目はコロナ前後の比較を求められているので医療と関わりのある課題であったとも言える。この点についてはここ数年の傾向の中にあると考えられる。仮に医療から離れたテーマからの出題となっても、その内容をよく確認すれば医療と関わるテーマになっていることが、本学の場合は多いと言える。 | 2023年度からの新形式で、受験生で対応の出来る出題が継続したことから、今後もこの形式での出題が続くものと予測される。問題としては良問の部類に入るので、しっかりと時事の話題を取り入れつつ、論文作成の練習を積み重ねてもらいたい。新形式になってから問題を本学ホームページで公開するようになったので、まずは2023年度、2024年度の本学の過去問で練習を行うことを考えてもらいたい。その他には、出題されるテーマが近い昭和大学、国際医療福祉大学などの過去問に取り組んでおくこともよい練習になるだろう。 |
| 東海大学 | 1日目
Facebookを利用する600人にそれを利用する際にどのような気持ちになるかを尋ねたところ、大半の人がポジティブになると答える一方で、3分の1の人がネガティブになると答え、その原因が他人に対する嫉妬に求められたという内容の文章を読んで考えたことを、自身の経験を踏まえて500字以内で論じる。 2日目 ルネ・マグリットの絵画「テーブルにつく男」(短い解説文あり)を見て、感じたこと、考えたことを500字以内で述べる。 |
1日目
坂井律子『〈いのち〉とがん 患者となって考えたこと』(岩波新書)から抜粋された文章を読んで考えたことを500字以内で述べる。 2日目 朝日新聞『天声人語』(2021年9月25日)から抜粋された文章を読んで考えたことを500字以内で述べる。 |
1日目
読売新聞『日曜の朝に』(2022年12月11日朝刊)に掲載された宮木優美の文章を読み、「子どもの声を騒音と捉える風潮」に対する自分の考えを500字以内で述べる。 2日目 公益財団法人丸岡文化財団編『日本一短い手紙「挑戦・チャレンジ」第30回一筆啓上賞』に収録されたある手紙を読んで、“普通”とはなにかについての自分の考えを500字以内で述べる。 |
写真や絵などの資料があわせて提示される場合もあるのが本学の小論文である。2024年度では1日目はシンプルな課題文型の出題に、2日目は短い手紙を読ませる課題文型の出題になった。内容面においては、1日目は子どもの声を騒音と捉える風潮についての文章、2日目は自閉症の娘にむけて記された、娘を“普通”の中で育てることが挑戦であったことを示す手紙からの出題であった。2023年度に続き、他者への共感力が失われているとも考えられる日本社会の現状を指摘する文章からの出題であり、その中で、他者や多様性をどう考えるか、人は他者とどのように接していくべきかを考えさせる課題が続いたといえる。 | 提示されるテーマ・形式が多岐に亘るので、様々なパターンを想定した練習が必要になる。解答時間も十分にあるとは言えないので、課題文・資料を速くかつ適切に押さえ、要求に対応していく練習を重ねたい。その際、提示されているものに込められている「考え」、「思い」をしっかりと読み取ろうとすることが重要になる。内容面では自身とは異なる存在である他者の事情に配慮できる考察を行うことがポイントになる。『良医』の持つべき視点が問われていることを強く意識してほしい。また、字数が500字と短めなので、不要な情報と必要な情報の取捨選択を適切に行い、自分の考えを明確かつ簡潔に文章化する練習を重ねておきたい。 |
| 金沢医科大学 | 前期1日目
VBM技術や脳の特定部位と特定能力の関係について記した文章を読み、 問1 問題文を200字以内で要約する。 問2 海馬が訓練により経時的に変化することを示すグラフから読み取れることを、200字以内で説明する。 前期2日目 鈴木宏昭『認知バイアス 心に潜むふしぎな働き』を読み、 問1 問題文を200字以内で要約する。 問2 1970年代のアメリカ人の主要な死因の実際値と推測値をまとめたグラフを見て、その中の「竜巻」の項目のグラフで実際値と推測値の間に差が生じた理由を、200字以内で説明する。 |
前期1日目
上岡直見『自動車の社会的費用・再考』(関連グラフ2つを含む)を読み、 問1 問題文を200字以内で要約する。 問2 日本の人口集中地区における人口密度と人口10万人あたりの交通事故死亡者数の関係 を示すグラフを見て、グラフの示す結果とその原因として考えられることを、200字以内で説明する。 前期2日目 濱島淑恵『子ども介護者 ヤングケアラーの現実と社会の壁』(関連グラフ2つを含む)を読み、 問1 問題文を200字以内で要約する。 問2 高校生ヤングケアラーの実態調査結果を示すグラフを見て、高校生ヤングケアラーの課題に対して必要と考えられる支援を200字以内で説明する。 |
前期1日目
河合雅司『世界100年カレンダー』を読み、 問1 問題文を200字以内で要約する。 問2 添付されたグラフ(日本人の出生数変化の要因分解分析)で2010年と2020年とを比較して2020年現在の少子化の原因を考察し、問題文を参考に現在の出生数減少に対して有効な対策を200字以内で論じる。 前期2日目 広井良典『持続可能な医療̶̶超高齢化時代の科学・公共性・死生観』を読み、 問1 問題文を200字以内で要約する。 問2 添付された図(人生前半の社会保障と高齢者関連の社会保障の国際比較を対GDP比で示したもの)と問題文を参考に、他国と比較した日本の社会保障支出の特徴とその理由として考えられることを200字以内で述べる。 |
2024年度もここ数年と同様に、課題文を200字以内で要約する設問と200字以内で自分の考えを述べる設問が出題された。課題文のテーマは、1日目が中国の少子化に関わるもの、2日目が日本の社会保障支出に関わるものとなった。医学部入試頻出かつ時事の話題からの出題であり、内容面でもここ数年の傾向が継続していると言えるだろう。自身の見解を述べる問2は、グラフや図で示されている事柄の背景を考察させる問題となった。これもここ数年の傾向から外れるものではないが、単純に課題文についての意見を述べればよい、というものではないことに注意したい。 | まずは文章を正確に読む力を養成する。課題文の中から筆者の主張とそのテーマを読み取り、その結論に至る根拠として必要なものを逆算して本文から見つけ出す練習を積み重ねてほしい。そのためには、段落ごとに何についてどのようなことが述べられていたのかを整理しながら読み進む「クセ」を身につけることが重要になる。自身の意見の論述については、設問の要求に対して明確な結論となぜそのように言えるのかという根拠を導き出す練習を積み重ねたい。制限字数が短いにも関わらず要求が細かいせいか、その細かな要求に対する結論のみを端的に記すミスが続出するタイプの問題である。過去問題の演習を重ねる中で結論を支える「根拠」を確実に記すことを心がけてもらいたい。 |
| 愛知医科大学 | 1日目
思春期に家族から抑圧され続けてきたが、大学進学後ひとり暮らしを始めると無理やりよい家族らしく接してこようとする両親に対してどう接すればよいかという男子大学生からの相談に対するアドバイスを、600字以内で述べる。 2日目 ジルとジャックは相思相愛であり、互いに相手が自身を愛してくれていることを知っている。そのうえで、ジャックは、ジルが自分を愛してくれていることは自分にとってどうでもよいことで、自分がジルを愛していることだけが大切だという。このときジルはどのように思うかについての考えと、今後二人の関係がどうなっていくかについての未来予想図についての自由な創作を、あわせて600字以内で述べる。 |
1日目
「水車で粉をひくことを生業とする男はよりよい粉をひくために水車自体に関心を持って調べていた。しかし、次第に水車を廻す水、その水の流れである川へと関心を移し、周囲の制止も聞かずに川を調べつづけた」という寓話を読んで、その寓話の示す教訓とそれについての自身の意見を、600字以内で述べる。 2日目 「散る桜 残る桜も 散る桜」という俳句に対して想定される好意的意見と批判的意見を挙げたうえで、自身の意見を、あわせて600字以内で述べる。 |
1日目
「『アイチさん』は実りのない労働をその意味も知らずに繰り返しているが、その労働に対して不満に思っている様子もない。そしてアイチさんが家族のためにもこの仕事をやめたくないと思っていることを“あなた”は知っている。アイチさんにこの事実を伝えるべきか?」という内容の文章を読んで、本文中の「あなた」の状況に類似したものを挙げ、それがなぜ似ているといえるのかという理由も挙げつつ、600字以内で説明する。 2日目 くまのプーさんと友だちのクリストファー・ロビンとの夏休み最後のお別れの日の場面を描いた文章を読み、その中でクリストファー・ロビンが語る「なにもしないでいる」ということについて、自身の考えを600字以内で述べる。 |
2021年度以降、1日目、2日目ともに短い課題文型で、様々な立場、多様な考え方があることを前提にして物事を考えることを求める課題を提示し、そのなかで最適解を考え出すことを要求する出題が続いている。2024年度もその傾向に沿った出題であった。与えられた状況を広い視点から考察し、そのなかから重視すべきポイントを見抜くことを求める出題であり、「医学を学ぶために必要な基礎学力と問題解決能力を備えた」「人間性と教養が豊かで、倫理的価値判断に優れた」「協調性を持ちコミュニケーション能力に富んだ」人であるかどうかを見る、アドミッション・ポリシーに沿った課題である。今後も同様の出題が続いていくものと考えられる。 | 出題傾向でも確認したとおり、一貫した方向性をもった出題が続いている。そのため、多様な視点をもって論理的に適切な範囲で最適な判断をすることを求める出題が続いていることを意識して練習を重ねることが求められる。提示された条件をしっかり押さえ、根拠を明確にして自分の考えをまとめる練習を重ねてもらいたい。また、他人はなぜそのように考えるのか、人による考えの違いはどこから生じているのかを意識し、分析していく習慣も身につけておこう。提示された状況を多角的に分析し、自分自身も含めたその場に関わる人間の多くが幸福になれる解答を追究するように心がけてほしい。本学の過去問題を中心に、昭和大学、国際医療福祉大学などの長めのテーマ型の出題に取り組んでおくとよいだろう。 |
| 大阪医科薬科大学 | 「スマートフォンは本当に必要か」ということについて、400字以内で考えを述べる。 | 「墓は本当に必要か」ということについて、400字以内で考えを述べる。 | 「医師としてのワーク・ライフ・バランス」について、400字以内で考えを述べる。 | 2024年度も例年通り、短いテーマでの出題となった。ただし、内容面では例年とは異なる出題となった。2024年度の出題は、医師としてのワーク・ライフ・バランスについて論じることを求めるものであり、働き方改革における労働基準法の改正により医師の時間外労働の上限規制が2024年4月1日から適用されることにともなっての内容と言えるだろう。医師・医療界に直接関わるテーマからの出題は近年にはなかったことからも、面食らった受験生も多かったことと思われる。ただし、自分が生活している社会・世界にどれほど関心を持っているか、自身とは異なる考え方を広く捉えていくことのできる人間であるかを確認しようという側面は維持されており、与えられた課題に対して、様々な角度から考察して論じるという意味では今まで通りの出題であったとも言える。「良医」になろうとする人間であれば与えられたテーマをどのように考えるか、という視点で取り組むことが重要になるのである。 | 400字の字数、30分という時間はともに医学部入試の小論文の中でも短いものである。したがって、小論文としての型をしっかりと理解し、その型に当てはめていく形で論述を進めていく習慣を身につけておくことが必要になる。結論を端的に述べ、段落を改めて根拠となる内容を、順を追って述べるという型を作り、そこに発想したことをあてはめて記していくことが一つのパターンになるだろう。設問の要求に対して明確な結論をイメージし、なぜそういえるのかをしっかりと考え、その内容を整理するという手順を繰り返し練習しておくことが重要になる。過去問に加えて、テーマの近い久留米大学、字数、形式の近い近畿大学などの過去問にも取り組んでおくとよいだろう。 |
| 近畿大学 | 前期
本学部の目標は「人に愛され、信頼され、尊敬される」医師の育成であるが、学生の立場から、何を学べばそのような医師になれるかということについて、自分の考えを400字以内で述べる。 後期 新型コロナウイルスワクチン接種の副反応が若者に及ぼす影響について、科学的・社会的な側面から考察したことを400字以内で述べる。 |
前期
良医への学修を始めるにあたって、自らの課題や問題点は何であると考えているか。また、それを克服するために実行しようと考えていることは何か。思うところを400字以内で述べる。 後期 ノーベル賞受賞者であるスバンテ・ペーボ博士が明らかにしたネアンデルタール人の遺伝情報についての研究業績(ホモ・サピエンスがその遺伝情報を受け継いでいること、人類が受け継いだその遺伝情報が標高の高い土地での生存を有利にすること、ウイルスに対する免疫応答の仕方に影響を与えること)をさらに発展させるとしたらどのようなことを考えるか。考察したことを400字以内で述べる。 |
前期
大学病院などで専門医療に携わる医師と地域などで幅広い医療に携わる医師では考え方や身につけるべき力が異なるが、それはどのように異なっているか。また、それらの考え方や能力を身につけるにはどのように勉強するべきか。自分の考えを400字以内で述べる。 後期 患者やその家族の文化的背景や言語等の多様性を理解することは医学・医療の分野において重要とされているが、なぜそのような理解が重要になるのか。また、このような状況に医学生としてどのように対応するか。自分の考えを400字以内で述べる。 |
短文テーマ型で400字以内での出題が継続している。内容面においても一定の傾向が見られ、前期では社会の求める医師に近づくには何が必要か、何を学ぶべきかを尋ねる問いが続いている。一方、後期では医療系の時事の話題について患者やその家族に寄り添う形で考察を進めることを求める課題が続いている。2024年度入試でも同様で、前期では臨床の現場で働く医師が身につけるべき考え方や能力を、実際に働くことになる現場のちがいに応じて考えさせるテーマから出題された。後期では患者や家族の多様性を医師・医療者はどのように受け止めるべきかについての考察を求める課題となった。いずれも例年通りの出題であり、今後も同じ傾向が継続していくと予測される。ただし、要所要所で新しいポイントが加わることもあるので、課題の要求・条件をしっかりと確認することも重要になるだろう。 | 一定の形式での出題が続いていることから、まずはこの形式に応じた学習を進めていくことが重要だ。過去に出題された問題を利用してしっかりと学習を進めておいてほしい。400字という字数は医学部としては標準的なものの、十分な字数が与えられているとは言えない。そのため、結論、根拠をよく整理して記すことも心がけてほしい。内容面については前期、後期それぞれで特徴がある。前期を受験する場合においては「良医」がどのような存在であるかをしっかりとイメージし、そこに求められている能力とそれをどのようにして身につけていくべきかを各自なりに考えておいてほしい。後期については、時事の医療問題についてどのようなことが起きているのか、しっかりと確認しておくことが望ましい。 |
| 兵庫医科大学 | NHKスペシャル取材班『縮小ニッポンの衝撃』(一部改変)
問1:豊島区が「消滅可能性都市」に挙げられた理由を、100字以内で説明する。 問2:図2と図3(豊島区の転出入世帯数に関するデータ)を総合して判断できることを、50字以内で説明する。 問3:「自然増」とはどういう状態であるかを、30字以内で説明する。 問4:豊島区外からの転入者のうち、20代単身者の平均年収が241万円であることが出題文の続きに示されていることを踏まえ、豊島区の人口が自然増に転じる方策について、自分の考えを500字以内で述べる。 |
久野愛『視覚化する味覚̶食を彩る資本主義』
問1:下線部①「そうした消費者の視覚経験」を60字以内で説明する。 問2:ネットスーパーの写真が、下線部②「食堂の入り口に置いてある食品サンプルに似た機能を果たすものだといえる」ことの理由を80字以内で説明する。 問3:ネットスーパーにおいて、下線部③「食品の中でも特に、野菜、精肉、鮮魚などの生鮮食品を自分の目で見られないことがネックになっている」のはなぜか、その理由についての自分の考えを80字以内で述べる。 問4:本文の続きで2020年以降、ネットスーパーを利用する人が国内外で増えていることが示されている。その理由について、自分の考えを30字以内で述べる。 問5:ネットスーパーは、社会において今後どの様な存在になると考えられるか、日本の社会状況を考慮しつつ自分の考えを、理由とともに400字以内で述べる。 |
松本健太郎『“有効求人倍率”が高ければ景気は回復していると言えるのか? データから事実を読み解くスキル』
問1:下線部①「2009年にリーマン・ショックによる落ち込み後、(有効求人倍率は)上昇を続けています」について、2018年、2019年の有効求人倍率は、それぞれ約1.6倍、約1.55倍だった。2020年以降の倍率はどうだったと考えるか、自分の考える理由を含めて100字以内で述べる。 問2:下線部②「『とりあえず出しとこ』求人」と同様の内容を示す言葉を文中から4文字で抜き出す。 問3:下線部③「雇用統計として計測している範囲がハローワークだけというのは、狭すぎる」の理由を、本文の内容をもとに100字以内で説明する。 問4:ハローワークを経由した就職件数を増やすにはどのような方法が考えられるか、自分の考えを理由とともに400字以内で述べる。 |
本学の小論文は課題文型での出題で、課題文は例年約1500字~約2300字程度、設問は4問~5問、多い年度で7問~8問程度である。すべての設問をあわせた総解答字数は700字前後となっている。2024年度は1900字弱の課題文からの出題であり、設問数は4問、総解答字数は604字となった。一方、テーマについては2023年度に続いて、時事の社会状況に関する出題となった。設問においては例年通り、現代文的な読解問題と自身の見解を述べさせるものの組合せで出題されたが、問題発見能力、問題解決能力を問うものがその中心となった。また、2020年以降の新型コロナウイルスの感染拡大についての知識を有していることを前提に論じることを求める出題もあり、一般常識の有無も試されていたと言える。これらの新しい傾向は他の私立大学医学部でも近年よく見られる傾向であることから、本学の入試においても今後しばらくの間、最新傾向に向けての変化が少しずつ現れてくるものと考えられる。 | 様々な分野の文章が取り上げられること、現代文の読解問題といえる問題が必ず出題されていることから、まずはしっかりとした読解力を養成したい。また、政治経済、倫理、科学技術、哲学的思想や教育論などが医学・医療とどう関わっているかという視点で考える練習を通じて、物事を様々な視点から考える習慣を持つことも望ましい。論述練習においては、ここ数年同じ形式での出題が続いているので、なるべく多くの過去問題に取り組んでおきたい。一方、時事の話題についての知識をもとに論理的に推察することを求める出題がなされたことから、新型コロナウイルスの流行や弱毒化、働き方改革など時事の知識を身につけていくことにも取り組んでもらいたい。 |
| 川崎医科大学 | 資料1:田辺俊介 著『外国人へのまなざしと政治意識』
資料2:図『 地域共生社会とは』(誰一人取り残さない社会に向けて ―つながり・重なり・支え合う地域共生社会へ― 厚生労働省ホームページより) 問 資料1・2を読み、自身の考える「共生社会」とはどのようなものかについて、800字以内で述べる。 |
福澤諭吉 著・齋藤孝 訳『現代語訳 学問のすすめ』を読み、「人間の見識、品格を高めるにはどうしたらよいか」ということについて、自分の考えを800字以内で述べる。 | 外山滋比古 著『知的創造のヒント』を読み、本文全体の主張を踏まえたうえで、「われわれは自覚しないところでずいぶん創造的なのである」(下線部(1))についての自分の考えを、800字以内で述べる。 | 課題文型・設問数は1問、制限字数は800字以内で、基本的な出題形式は2019年度以降変化していない。2024年度入試は2023年度入試に続き、読みやすい課題文、わかりやすい要求での出題となり、受験生としては対応しやすいものであった。出題の要求は、人間の人生が与えられた様々なのものを編集していく作業に類似していることを指摘し、その作業が一見模倣に見えても二次的創造のような創造性に富むものだとする筆者の主張に対する自身の見解を求めるものであった。人間、患者の多様性を理解できる良医を目指す人間にふさわしい考え方ができているかどうかを測ろうとする、ここ数年の傾向に沿った出題であったと言えるだろう。 | まずは課題文の正確な把握が前提になる。抽象度の高い文章からも出題されるので、文章の内容をよく整理し、単純化して理解していく訓練を積み重ねておきたい。一定の長さをもつ課題文型の小論文に取り組んでおくとよいだろう。また、課題の要求以外に考察し、書き込まなければならない事柄が条件として示されることもあるので、訓練の際には、課題の要求だけでなく、論述の条件についてもしっかりと確認することを意識してほしい。過去問題に加え、同じ課題文型の獨協医科大学や北里大学、福岡大学などの過去問題を活用して練習してみるのもよいだろう。 |
| 産業医科大学 | 大問1
内閣府ホームページにある、Society 5.0について説明する文章(図を含む・一部改変)を読んで設問に答える。 問1:Society 5.0が目指している社会がどのようなものであるかについて、200字以内でまとめる。 問2:Society 5.0が実現する社会における医師の役割についての自分の考えを、400字以内で述べる。 大問2 中屋敷均著『科学と非科学 その正体を探る』 問1:「昨日も今日も阪神が勝ったので、明日も阪神が勝つ」という予測と、「リンゴを枝から切り離せば地上に落下する」という法則の違いを説明する。(解答欄:縦22cm×横15.4cm) 問2:本文にある「科学的な真理」が医学に存在するかについての自分の考えを400字以内で述べる。 |
大問1
産業医科大学医学部のアドミッション・ポリシー(5項目)のうち、自身に最も当てはまる項目を1つ選び、どのように当てはまっているのかを具体的に説明する。 大問2 ジェローム・グループマン 著・美沢惠子 訳『医者は現場でどう考えるか』 問1:医師の診断の過程における「ヒューリスティクス」の利点と問題点について400字以内で説明する。 問2:「ヤークス・ドッドソンの法則」が医師の診断に与える影響について、図と文章で説明する。 |
大問1
カルロ・ロヴェッリ著『カルロ・ロヴェッリの科学とは何か』の日本語訳から抜粋された文章を読んで、設問に答える。 問1:著者が論じている科学的な思想について200字以内で説明する。 問2:医学が科学の一分野であることを前提に、自分がどのように医学を学ぶかということについて論じる。 大問2 宮沢賢治著『眼にて云ふ』を読んで、医療者にとって大切なことについて400字以内で論じる。 大問3 中学校教員のAさんは最近、元気がなく休みがちで、業務に支障が出ている。そのAさんの情報、業務内容、ある一日のスケジュールを確認して、Aさんが元気よく働けるようにするための対応について考え、述べる。 |
2020年度以降、大問2題の出題に落ちついていた本学の小論文であるが、2024年度は4年ぶりに大問3題からの出題となった。制限時間に変更はないものの、大問1、大問2の課題文はさほど長いものではないため、落ちついて対応すれば、十分に時間は足りたものと考えられる。大問3ではテーマ+資料の形の出題となり、これも久々の出題形式と言えるものであったが、課題の要求が明確であったことから、例年のものよりもむしろ、対応しやすかったものと考えられる。問題文のなかの特定の内容を説明する、自身について客観的に論じる、提示されたものの中から問題の本質を捉えて解決策を提示する、といった各設問の要求の方向性が今までの傾向と一致するものであったと言える。とはいえ、問題自体の難度は高くなくても、設問の要求・条件をしっかりと確認しないと対応しづらい出題となっている点には注意したいところである。 | 本学の小論文は様々な形式で出題される。したがって、過去問はもちろん、広く他の大学の問題にも取り組み、多様な形式に慣れておくことが重要になる。このような経験を積んだうえで、出題された問題にどのように対応していけばよいかをその都度考えていくようにしたい。また、課題文の内容や中心に据えられたテーマをよく理解することを前提にした問題が続いているので、課題文や設問の要求を正しく、かつ、深く理解する能力が求められていると言える。その意味で、丁寧な読解を心がけることが重要になることを肝に銘じてもらいたい。特に自己分析を求める問題も含めて、提示されたテーマに対する問題発見・問題解決を求める設問がかならず1題は出題されているので、この点も意識して学習に取り組んでもらいたい。 |
| 久留米大学 | 厚生労働省が示した「新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドライン令和2年7月29日(第1版)」からの抜粋を読み、新型コロナウイルス感染症で自分の肉親が亡くなった場合を念頭におき、その葬儀等を含め配慮すべき事柄について、自分の考えを700字以内で述べる。 | 日本財団 子どもの貧困対策チーム『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃』から抜粋された文章を読み、教育機会が失われることによる子どもへの直接的な影響と社会全体における損失、それらに対する対応策と期待される効果について、自分の考えを600字程度で述べる。 | 新聞記事(東奥日報「働きながら介護 9兆円損」2023年4月18日)から抜粋された文章を読み、働きながら家族を介護する人の経済面の損失を減らすための具体的な対策について、自分の考えを700字以内で述べる。 | 課題文型の小論文が出題されている。2024年度も2022年度、2023年度に続き、700字強の課題文を読んでの論述を要求する出題となった。文章自体はそれほど難しいものではないので要点をしっかりと押さえ、そのうえで課題の要求についてしっかりと考えれば十分に対応できるものである。内容面においては2024年度も、「近年の社会で問題になっていることを扱う課題資料の中から問題の本質を読み取り、それにどのように対処していくべきかについて論じさせる」という「軸」に沿った出題となった。例年通りの出題が2024年度においても継続している言える。 | 課題文型の出題は今後も続くものと考えられる。課題が何を要求しているのかをしっかりと踏まえ、課題文の中から問題の本質を読み取ることが重要になるだろう。そのためには、過去問に広く取り組むとともに、実際に社会で問題になっている物事に対する自身の見解をまとめておくことが重要になる。その際に、良医であればそれらの社会問題についてどのように考えるか、どのようにして解決を目指すかという視点をもって考察を進めるようにしておきたい。要求、形式が安定しているので、与えられた時間内にしっかりとした対応ができるように練習を積み重ねておくことが一番の対策となるはずだ。 |
国公立大学
| 大学名(医学部) | 問題内容 | 出題傾向 | 対策 | ||
| 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |||
| 京都府立医科大学 | 鷲田清一「折々のことば」(2020年12月3日・朝日新聞)を読んで、勉強することについての自分の考えを、自身の経験に基づいて600字以内で述べる。 | 天野篤が新聞紙上に執筆した文章を読んで、医師にふさわしい「傑出した人物」とはどのような人物であるかということについての自分の考えを600字以内で述べる。 | 鷲田清一「折々のことば」(2020年9月22日・朝日新聞)を読んで、大学での学びについての自分の考えを600字以内で述べる。 | 50分で600字以内の論述を求める課題文型の出題が続いている。提示される文章は新聞内のコラムが中心であり、分量面から言えば、非常に短い文章からの出題となっている。論述テーマとしては医師として持つべき意識、学びへの取り組み方に関わるものが出題されており、医師の持つべきプロフェッショナリズム、問題解決意識等に関わるものとなっている。課題文自体に医学・医療のことが記されていなくても、医師の持つべき人間性、自覚を判断できるテーマからの出題を一つの方針としているものと考えられる。 | 短い文章の読解が求められていることに何よりも注意してほしい。課題の要求に準じて提示された文章を読んだ場合、文章内のどの点に注意しなければならないのか、ということを強く意識して読まないと解釈にズレが生じ、論述内容も要求から外れていくことになりかねない。そのことを防ぐためにも、日ごろから医療系の企画連載も含めた新聞内のコラムに目を通し、丁寧な解釈を心がける習慣をつけておいてほしい。論述の練習としては、過去問題が公表されていない大学であることから、類似のテーマ・形式で出題される国際医療福祉大学、昭和大学、日本医科大学などの問題を活用してもよいだろう。 |

































































